「さん」と愛称の話
人のブログの記事からテーマを拝借するのは、書き溜めたものを全部吐き出してしまった証拠なのですけれど、今日も拝借しましょう。
わたしたちの呼び方の話です。
ロシア語の愛称の話
ロシア人の名前には、愛称があります*1。例えば、「アレクサンドラ」という名前であれば「サーシャ」、「ナタリア」であれば「ナターシャ」が愛称になります。
ロシア文学を読んだり、ロシア映画を見ると、1人の人物にいくつも名前があって(わたし同様に)混乱した人もいらっしゃるのではないでしょうか。
付き合い始める前のフランス風
付き合いはじめる前のAさんは、フランスの文脈でわたしとデートをしていましたので、自分の正式な名前だけを名乗りました。わたしが、「『戦争と平和』を読んだら、ロシア人の名前には愛称があるらしいけれど、Aさんのはなんでしょうか」と訊いても、「わたしはAだから、そう呼ばれたい」と言うのでした。
調べればある程度わかる
「なるほど」と思ったのですが、惚れた弱み、グーグル大先生にお問い合わせをしてしまいした。なるほど。調べればわかるのは、ロシア語では大体、名前と愛称の組み合わせが決まっているからです。Aさんの名前には、2種類の愛称があることがわかったのでした。
あとは、どっちがAさんのお好みの愛称なのかをわかればよいのですが、付き合いはじめて電話番号だけではなくて、Eメールアドレスを手に入れてみたら、なんとそこに愛称が書いてありました。なぁんだ。
呼び捨てにするのか
さて日本語環境で育ったわたしは、Aさんの愛称が手に入ったときに悩みました。フランス語で英語環境を使っているときは、もちろん、名前は呼び捨てなのです。そうでないとヘンだからです。しかしわたしはどれだけ英語(やドイツ語)を使っても、名前を呼び捨てにすることに慣れていないのでした。
そこでごく親しい友人たちには、「『さん』づけて呼んで良い?」とお願いしていたのです。たいていは、最初は「なんで?」と訊かれますが、説明すると「嫌だ」とは言われないものです。
もちろん日本語環境でも恋人同士として付き合いだしたら、呼び捨てにするのが普通なのはわかっていますけれど、できればAさんも「さん」づけで呼びたい*2。わたしはそう思うのでした。
混ぜればいい
付き合いはじめてしばらくして、じゃあAさんもなら、ロシア語風とわたしが気楽な日本語風を混ぜてみよう。わたしはそう思い立ちました。というわけである日突然、Aさんの愛称に「さん」をつけて呼んでみたのでした。
Aさんは、「愛称で呼ぶんだ」とちょっとニッコリしたあと、「で、その謎の語尾は何」と訊いてくれたのでした。というわけで説明するわたし。Aさんは「なんだかよくわからないけれど、それが良いなら、わたしもあなたの名前に『さん』つけようと思う」と言いました。「なんだか特別な感じがしていい」とAさんは思ったのでした。そらそうでしょう。ロシア語風と日本語風を混ぜて使って、エキゾチックだと思わない人は珍しいですから。
というわけで、わたしはAさんを日本語風に「さん」づけで、ロシア語風に愛称で、呼んでいます。