CDG-HNDな遠距離国際恋愛日記

パリと東京。Aさんとわたし。

場所と時間に結びついた文化の話

今朝、Aさんと話したとき、「となりのトトロ」の話になりました。日本と北米以外ではNetflixスタジオジブリ作品が再録されましたので、どうやらそれを見たようです。

(ところでこの先、「となりのトトロ」の一場面に言及しなくてはならないのですが、それってネタバレにあたるのでしょうか。わたしの属する場所や時代の文化にとっては、割と共有財産だと思うので、そういうことはしないでいいように思いますけれど、でも原則としては「ネタバレはネタバレだな」ということですし。むずかしいところです。)

 

親子関係とお風呂

Aさんはどうも「となりのトトロ」の親子関係の描写にとてもショックをうけたようです。「これは本当に子供映画なのか」ということにすら疑いを持つようです。

どうやらAさんが不思議に思ったところは、父と娘たちが一緒にお風呂に入るところです。学校あがっているのに、一緒にお風呂に入るのは普通じゃないように思われるようです。

わたしの反応は、「色々不思議なところはあるのに、そこですか」という感じでした。そこで色々話しあってみたのですけれど、どうも入浴に関する感覚が基本的に、Aさんとわたしとで違う感じがします。わたしにとっては、小学校入りたてくらいまでなら、親子で風呂に入る場面があっても不思議な感じがしないのです。実際に検索すると、多くの温泉旅館の広告は、そういう感じの写真広告が出ています。そうです、Aさんがあまりに強く主張するので、わたしの感覚が(例によって)おかしいのかと思いまして、グーグルで検索したんです。

「うちは、そういうことはしません」とAさんは家族風呂について言います。なるほどそういうことなら、それは我が家のルールにいたしましょう。

(そもそもまだ同居まで1年以上必要なのに、子どもの話をするのは気が早いするのですが、ここは生活のかたちのことですから、すり合わせるのは大事なことです。ちなみに、子どもについて語るときの接続詞は、「when」じゃなくて「if」です。)

時間と場所と文化の話

Aさんとわたしは、似ている分野で働き、似たようなコスモポリタンな思考法と生活様式を持っていますので、普段はとても考えることが似ているのです。だからこそ、このブログでも基本的に「付き合う相手を国籍とか、出身地で分類することはあまり意味ないぜ」という論調なわけです。それでも、もちろん、わたし達は異なる場所で生まれ育っていますし、時代感覚も少しずれています。

例えば、Aさんにとっては、ソ連の崩壊はまだリアルな体験ではないですが、ロシアのデフォルトと預金封鎖はリアルな体験です。わたしにとって、ソ連の崩壊は世界史的な事件としては初めての体験でしたし、一方でロシアのデフォルトは生活に直撃しなかったので事実としてしか知りません。

20世紀後半に育ったということを共有しているとしても、Aさんの育った地域とわたしが育った地域では、入浴に関する感覚がぜんぜん違うというのも分かる話です。

名前をつけずにおきたい

それでもこの意味の文化を、国や世代に直接結びつけることには、わたしは反対です。時間と場所は、もっともっと、局所的でしょうし、家庭環境や個人の好みという要素も結びつけば、話はとても複雑になりますし、複雑なまま受け入れるしかないのでしょう。そして一緒に住むならお互いにこの複雑でもやっとしたものを、あまり簡単に名前をつけずにおいておくという練習もしておきたいなと思うのです。

わたし、変わってますかね。

でもほらね、「日本人だから」とか「帰国子女だから」とか思わないでも、みなさんはわたしを理解できるでしょう。そういうことです。