コクハクの謎の話
「日本だとコクハクするって出てたから、てっきりされるものだと思っていた」
Aさんはときどき思い出したように、言います。
確かにわたし達はコクハクして付き合い始めたわけではありません。そもそも30代後半でコクハクするものなのか、わたしにはよくわからんのです*1。
なんにしろわたしは「西ヨーロッパでは告白はしないみたいだから、しないでなんとか前に勧めないといけないのでござるよ」と思って、色々画策しておりましたのよ*2。
しみじみと距離をつめ、定期的にAさんの好きなビールを出す店に通い、映画を一緒に見て……。わたしが努力している間、Aさんは「まどろっこしいな、おい」と思い、女子会で情勢を分析し、「男子だろ、早くはっきりしてよ」と 思っていたのでした。
あまりにまどろっこしいので、Aさんはインターネットで割と標準的な日本風のお付き合いの始め方を調べるのでした。そして「コクハク」というイベントが日本にはあること。男子がいきなり「付き合ってください」的なことを言い出して関係が始まるらしいことを調べだしたのでした。
女子会でもこのエキゾチックなイベントについて検討し、どうやらそういうイベントが起こるのではないかと思っていたようです。
結局わたしはコクハクをせず(だってしないものだって思っていたんですもの)、気づいたらカップルだねみたいな共通理解が生じたのでした*3。そしてなんとかかんとか婚約までたどり着きました。
そして現在、冒頭のシーンに戻ります。「コクハクされてみたかったなあ」とAさんはニヤニヤしながら言います。そしてわたしはなぜかそう言われるたびに、「どーもすいません」と謝るのでした。
*1:日本語のインターネットで「30代 告白」って調べると色々面白いですよ。
*2:ベルギーでもそうらしいですぜ。
2人の時間を重ね、いつの間にかカップルになっている という自然な流れによるもので、 最初から関係に名前を付けるのはおかしい、と 今の彼氏もどきも、過去の彼氏&もどきたちにも同じことを言われました。
Mくんと私①-彼氏もどきと私 - ブリュ子のベルギー日記
*3:しかしいつだかなんだかわからないのも悲しいですから、わたしたちは最初のデートを記念日的に扱う習慣になっております。