Something old and blue の話
Aさんとわたしは付き合いはじめて5年目。遠距離恋愛になって4年目です。そろそろ一緒に住みたいものです。この地球上、わたしたちが一緒に住むにはどちらかに(場合によっては2人とも)滞在許可(在留許可)が必要になります。そして滞在許可や在留許可を手に入れるためには、おそらく法律婚をするのが一番近道になります。
最近、わたし達の会話も「同居したいなら法律婚をするのが一番近道だな」ということになることがしばしばあります。Aさんはそれでも時々「フランスならまずPACSなのになぁ」と言っていますが*1、しかしビサや滞在許可という障壁の前には、関連する各国が納得する形でわたし達の関係をオフィシャルにするしかないのです。
指輪
という訳で、Aさんが喜び、周囲に受け入れ可能(で、在留資格の審査官の方が納得するよう)な方式で婚約いたしましょうと決断して、指輪を渡すことにしました。
ここで悩みました。
実はわたしには祖母の形見分けで回ってきている指輪があるのです。なかなか素敵な(とわたしは思う)サファイアの指輪なのでこれを使いたい。しかし様式美として法律婚しようとしているのに、これは正解なのか。
給料3カ月分のダイヤモンドは、広告のなせる技だと知っていることと、一般に受け入れ可能なこととの間には差があります。
お下がり?
まず受け継いだ指輪を使うについちゃあ、日本語で検索してみるた結果と英語で検索してみた結果の感想がずいぶん違うのです。
日本語
日本語で検索すると「お下がりの指輪なんて」という投稿が沢山あり、それに対して「非常識だ」という反論がされ、全体に議論が大変喧嘩腰で、なかなか読むのがホネでした。
なんだかよく分かりませんでしたが、結局、日本語でのインターネット世界では新しい指輪を買わない選択肢はあまりないようです。
英語
一方で英語だとものすごくポジティブな感想が少なくありません。(どうやら、イギリスの王子たちが、受け継いだリングを使用したようで、そういう記事も多くありました。)ただし「素敵だけど、わたしは新しいものが良い」という意見も確かに見つかります*2。
わからん
結局指輪を渡してみて、新しいものが欲しければ一緒に買いに行くことを提案してみるしかないようです。
そもそも指輪いるの?
もう1つの悩みは、ロシア語圏では婚約指輪という習慣が(まだ)広がっていないらしいことです。ロシア語ができないので、あまりロシアの情報が探れていないのですが、英語で「伝統的ロシアの結婚」みたいなサイトを見ると、そう書いてあります。
問題は、日本の習慣についてグーグル検索すると謎マナーが出てくるのと同様、おそらくこのようなサイトは謎習慣を正統化しているだろうことです。出来ることなら、謎習慣を定着させる手助けはしたくない。わたしはそう思うのです。思うけれども、手がかりがありません。
インターネットと付き合うわけでもない
さらにもっと問題なのは、Aさんが色んな意味で「伝統的なロシア人」ではないことです。伝統的なロシア人が、パリで出会ったあまり伝統的ではない日本人と遠距離恋愛するとも思えません。
伝統的ではないから、ウェブサイトは余計に役にたちません。
正解を探さない
結局Aさんがどう思うかの正解をインターネット経由で探すのは、難しいようです。予想通りですが、まあしようがない。とはいえ、真正面から訊いても面白くないものです。
ならば、少なくともわたしの気の済むようにするしかないようです。というわけで、今回の滞在中に大げさでなく、指輪を渡す形式にしましょうと決めました。
じゃんじゃかロマンチックな雰囲気を積み重ねて、なんだったらYoutubeに投稿されるようなプロポーズをしてみたらどうなるかしら……と思わないでもなかったのですが、それをする勇気も財力もありませんし、何よりAさんがドン引きしたらどうしましょうとおもったのでした。
結果
結果は、案ずるより産むが易しでした。指輪を渡してみたところ、最初はきょとんとしておりましたが、「もちろん、いいよ」と言ってもらえました。
「きょとんとされたなあ」と思いましたので、とりあえず指輪を受け入れて頂いたあと、訊いてみたところ、やはり「婚約にはあまりイメージがない」とのこと。インターネットやるなあ。「あなたがやりたいなら、婚約は大事なのでしょう」だそうです。
それでも指輪は気に入って貰えたようです。
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