家具を買う
今のアパートに住むようになって、3年目ですが、我が家には家具があまりありません。本が床に積み重ねられ、ちょっと前までコーヒーテーブルも段ボール箱にカバーをかけたものでした。ちょっとだけ、「死ぬまでにしたい10のこと [DVD]」に出てくるアパートのようです*1。いや実際には机も台所もあるのですけれども。
Aさんはわたしのアパートに来るたびに、「こんなのは家じゃない」と大変不満そうです。その度に「そのうちなんとかします。でもこのアパートにどれだけ住むかもわからないじゃない」とごまかしてきたのですが、Aさんは「そういうことじゃない」と言いますし、母にこの話をしたら「そういう小さなことで『損したくない』と考えるのが変」と言われてしまいました。それぞれ言われたときは、突っぱねてみたりしたのですけれども、このアパートでの3度目の春が来てみるとなんとなくわたしもこのままではよろしくないように感じます。
てなわけで、とうとう家具を入れることにしたのでした。
今回は床の本を縦に並べることが目標です。ちょうどIKEAで、3万円買えば送料無料になるキャンペーンをやってますので、それにあわせて本棚(とアームチェア)を仕入れてみました*2。
今日の買い物が全体で、70kg(ほぼ大人の男性一人分)です。これでとりあえず5月にAさんがアパートに来るときに、少しは広い部屋で仕事ができるようになるでしょう。
IKEAに対する微妙な気持ち
IKEAとその家具(中でも安いラインの家具)に対して、わたしには葛藤があります。
一方で、ほとんど飾りのないデザインの木製家具は間違いなくわたしの好みです。部屋にはなるべく模様がない方がわたしはリラックスできるのです。
そしてシンプルなデザインの家具は(日本のIKEAの価格設定でも)他の家具ブランドよりも安いのもありがたいことです。(そして、今回は送料無料です。)
問題は安さ
他方でわたしは値段の安さにとても居心地の悪さを感じます。
安さはどこからくるのか
1つは、この値段はさまざまな搾取の形式の結果であることは間違いないことです。労働力の搾取の状況は、例えば下記の2006年のレポートの結果を見ると、控えめに言って問題がありますし、
今回に至っては運送料が無料です。なんだか激しく正義にもとることをしている気がします。このキャンペーンで運送業者の方が、無理な割引を強いられていないことだけを願います。
大規模な(合法的)節税スキームで税金逃れをしています。(ちなみに、IKEAの日本語サイトがオランダのIKEAのサイトになっているのは、そのような対策の一例のようです。)
(これは欧州緑の党の調査)
個人的な気持ちの問題
社会正義の問題の他にも、ちょっとだけプライドの問題もあります。ドイツでの学生生活から一貫して、わたしはIKEAの一番安いラインの家具しか買えない生活を送っているのです。
「もう学生じゃないの。もう大人なの」といくら意気がってみても、所詮はIKEAの一番安いラインに囲まれてしか生活できないレベルの人間なのです。これがIKEAでも、もう少し良いラインの家具が買える生活ならよいのかもしれませんけれど、買えません。悔しいことですけれど、IKEAに行くたびにいつか「こういう感じのデザインは好きだけど、もう少し素材がいいと良いのだけれどね」みたいに言ってみたいのです。
一言でまとめたら、「IKEAの家具を袖にする、そんな生活がしたい。でもできない。うじうじ」ということです。そんなことでうじうじするなんて、おかしいですが、でもそういう気持ちは、案外、わたしのドライビングフォースになっている気がします。
うじうじしてても荷物は届く
うじうじしていても、社会正義にもとる行為であろうと、わたしは棚から商品を選び、クレジットカードがわたしの決済を承認しました。銀行口座にはそのためのお金があります。そして11日には荷物が届くので、わたしはそれを組み立てるのでしょう。きっと組み立てたら、それなりの満足感が得られ、本が片付けば部屋が広くなったように感じるのでしょう。