小さな願掛け

Aさんは、"fortune"とか"luck"とかいう言葉が好きなようです。

そしてなんだか事ある毎に小さな願掛けをするのです。例えば、16時16分のように時計の時分があったときなんか、ちょっと会話を止めてでも願掛けしています。

そんなAさんが日本に来て、(わたしがびっくりするほど)ハマったのが、社寺のおみくじです。そしてAさんは、案外(と言ったら気を悪くするかな)、良いくじを引き当てるのです。今年も浅草寺で大吉なんか引いてました。最近のおみくじは英訳がついていたりするので、それを読みながら「浅草はわたしのお気にいりだな」とゴキゲンさんなAさんでありました。

そんなAさんを尻目に、わたしはと言えば、おみくじはできれば引きたくないし(実際に何年もひいてなかったし)、願掛けなんて興味もないのでした。それでも「なんでよ。なんでよ」と言いながら、Aさんはわたしにおみくじを引かせ、それが「凶」だったりすると憤慨して、
「これはね、もういいのが出るまでいろんなお寺巡るからね」
と鼻息を荒くするのでした。

そんなAさんに「もう良いですよ」と言いながら、わたしも気づいたら時計を気にし、時分が合ってるのを見つけたりすると、小さく願掛けをしているようになりました。そんな様子を見てAさんは、若干満足そうです。
「願いは何よ」
「いやいや、『願い事は秘密にしないといけない』って言ったのはあなたじゃないですか」
そんな会話をしながら、人ってのはまあある程度簡単に変わるものですなと思うのでした。